「日本酒50選シリーズ」は、「〇〇の日本酒を徹底解説!味の特徴は?どんなこだわりがあるの?」と題して、様々な銘柄や酒蔵を紹介するシリーズ記事です。
これまでの記事やこれからの記事はこちら、「おすすめ日本酒50選を徹底解説!味の特徴は?どんなこだわりがあるの?」
No.2は「獺祭」です!
はじめに
和食が世界的な評価を受けたことによって日本酒もまた日本だけで飲まれる飲み物ではなく、世界中で愛されるものとなっています。
そんなお酒の中でも特に愛好家が多く知名度が高いブランドが旭酒造が製造している獺祭です。
お酒にあまり詳しくない人でも獺祭という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。
人気であることから市場に出回っている数も少なく、商品によっては通常の値段をはるかに超えた価格で取引されることもあるほどです。
獺祭が人気となっている理由にほかの酒造メーカーとは異なる酒造りをしていることが挙げられます。
今回は、獺祭の名前の由来や製造法などについて解説します。
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獺祭の名前の由来
(画像:獺祭HPより)
獺祭は山口県にある旭酒造で製造されている日本酒です。
旭酒造の所在地は山口県の獺越です。
この獺越という地名の由来は、「川上村に古くから住んでいるカワウソが居て、子供を化かして川上村まで追越してきた」という言い伝えによるものだとされています。
この獺越という地名から一時拝借し、獺祭という名称にしたのが名前の由来です。
ちなみに獺祭という言葉には独自の意味があって獺が岸に捕らえた魚を並べるという習性がまるでお祭りをするように見えることから、これを祭儀になぞらえられました。
旭酒造はもともと「旭富士」という伝統的な手法によって製造しているお酒を販売していたのですが、日本酒の衰退とともに売り上げが激減し、一時は倒産寸前まで追い込まれました。
そのような危機的状況を脱するため、今までの経験を活かしつつもこれまでとは全く違う革新的な製造法で造られたのが獺祭であり、この獺祭によって旭酒造の業績は右肩上がり、世界進出までも果たしています。
獺祭を製造している旭酒造には「酔うため売るためではなく味わう酒を」という信念があります。
本当にお客さんが飲んでおいしいと思えるようなお酒を造ることに尽力していることが危機的状況から脱した最大の要因といえるでしょう。
獺祭はあまりの人気ぶりにプレミア価格で出回っていることもあり、旭酒造のホームページでは品薄に対しての謝罪と適正価格で購入するよう注意喚起をしているほどです。
革新的な製造方法
(画像:獺祭HPより)
原料へのこだわり
獺祭は使用する原料からとてもこだわっています。
お酒を造る原料は水、米、麹、そして酵母。
それぞれどのようなものを利用しながら製造しているか見ていきましょう。
~水へのこだわり~
獺祭で使用するお水はすべて自社の井戸からくみ上げられた水を利用しています。
旭酒造の社長は水に関してのプロフェッショナルで、かつてとあるテレビ番組で自社で使用している井戸水と他社のミネラルウォーターや浄水器の水を飲み比べて当てるという企画で見事に全種類の水を当てたという実力を誇っています。
~米へのこだわり~
お米は山田錦というお米を使用しています。
山田錦は私たちが普段口にしているお米とは異なる「酒米」という種類のお米です。
私達が食べているお米はデンプン質が全体的に散らばっているという特徴があるのに対し、山田錦をはじめとした酒米はデンプン質が中央に集中するという特徴を持っています。
酒米も食用として食べることはできますが、通常のお米と比べると美味しくありません。
山田錦はそんな酒米の中でも最高級に位置するお米です。
日本酒を作る際にはこの酒米を精米する必要があり、この精米具合によって名称が変わってきます。
精米し残ったお米の割合が70パーセント以上ならば本醸造または純米酒、60パーセント以上であれば吟醸または純米吟醸、50パーセント以下になると最高級の大吟醸または純米大吟醸となります。
当然、精米してお米を削れば削るほど一本あたりに使用するお米が多く必要になりますし、削るという作業自体も労力やコスト、それに時間を要します。
それにも関わらず、獺祭を製造する際には大吟醸の基準値とされている50パーセントよりももっと少ない割合まで磨いています。
最も割合の多いものでも45パーセント、最も少ない割合のものではたった23パーセントしか使用しません。
このようにとてもコストのかかる精米や酒米をあえて選択することによって獺祭はほかのどの日本酒の追随も許さないような味を実現しているのです。
~麹へのこだわり~
次に麹ですが、麹は酒造りの際に最も重要になるものです。
麹によって酵母は発酵するのですが、その発酵のためのコントロールは麹によってなされています。
最高の麹を製造するためには使用しているお米の現状を把握し、繊細に操作する必要があります。
そのため機械化が進んでいる製造現場においても獺祭ではこの麹を製造する工程を人の手によっておこなっています。
麹は生き物なので24時間昼夜問わず管理し続ける必要があります。
そのため交代制で常に作業員が麹の状態を見守り、安定した品質の麹を製造しています。
麹と酵母を発行させる仕込みの工程も美味しい日本酒を製造するためにはとても大切です。
酒造メーカーの中ではこの仕込みの工程をコンピューターや温度コントローラーによって行うところもありますが、獺祭では仕込みの際に酵母が生存できるギリギリの温度からスタートさせます。
したがって0.1度単位での温度管理が必要になるのですが、さすがにここまで細かな温度管理は機械にはできないため、原始的な人の手によって温度管理するという手法によって安定した味を楽しめるお酒を提供することを実現しています。
酒造りのIT革命〜杜氏制度の廃止〜
ここまでの製造法を見ると獺祭はとても原始的な方法で製造しているように見えますが、実は獺祭の製造方法は「酒造りのIT革命」といわれるくらい革新的な方法で製造されています。
(画像:獺祭HPより)
これは獺祭の本社蔵です。まるでオフィス街に並ぶビルのようですね。
これまで日本酒を製造するうえで絶対に欠かすことができない存在と言われてきたのが「杜氏」という人たちです。
杜氏はそのお酒を製造するうえでの最高責任者という位置づけで、最終的な日本酒の風味チェックをおこなう重要な役割を担っています。
つまりお酒の味を決めるのは杜氏だといっても過言ではないくらい日本酒を製造するうえでの最重要人物といえます。
獺祭を製造していた旭酒造にもかつては当然杜氏が存在し、製造したお酒の風味の最終チェックをしてもらっていたのですが、経営不振に陥った際にその杜氏が居なくなってしまいました。
杜氏が居なくなるという事はお酒の味を決める人がいなくなるという事になり、日本酒の製造自体ができません。
普通ならば新たに杜氏となってくれるような人たちを探すことになるでしょう。
ところが旭酒造では新しく杜氏を探すようなことはしませんでした。
なんと杜氏なしでお酒を製造するという決断をし、実際に実行したのです。
事実獺祭を製造する際には杜氏に味見をしてもらうという事は一切行っていません。
代わりに徹底したデータ管理によって獺祭の風味を数値的に分析し、その数値に極限まで近づけることによって安定した風味のお酒を提供し続けることを実現しているのです。
遠心分離システム
(画像:獺祭HPより)
獺祭を製造する工程の話に戻りますが、仕込みをしたお酒は上槽という工程に進みます。
実はこの上槽という工程はお酒の良し悪しを決めるとても重要な工程となっていて、良いお酒になるか悪いお酒になるかはお米を洗う洗米という工程と、この上槽という工程によってほぼ決まるといわれているほどです。
ここで上槽という工程について解説すると仕込みまでの工程が終わった日本酒は米と麹、そして水が全て混ざり合った状態であり外見上は白く濁った状態になっています。
この状態を「もろみ」と呼んでいます。
ほぼもろみのままで販売している「もろみ種」と呼ばれる種類の日本酒もありますが、獺祭の場合はこのもろみを濾して無色透明な状態にしてから瓶詰めを行います。
このもろみを分離する上槽という作業は通常布袋にもろみを入れ機械で圧縮することによって日本酒を搾り取るのですが、先ほども書いたようにもろみに含まれている麹は生き物です。
機械的に圧力をかけることによってもろみの中に含まれた麹にストレスがかかり本来の風味や匂いなどが変化する恐れがあります。
そこで旭酒造は業界初となる遠心分離システムを導入し、1分間に3000回転という高速回転をかけながらもろみと液体を分離させています。
これによってその都度風味や香りが変わるという事はなく、極めて純度の高い日本酒を安定して製造することに成功しています。
遠心分離機本体は家が軽く一軒買えるほど高級なものですし、今まで導入したメーカーも存在しないためトラブルの際の対処方法が確立されていないなど遠心分離機を導入することによって発生するリスクもたくさんありました。
しかし、あえて誰も挑戦していないことに危機的状況の中でチャレンジしたことが今日の獺祭による旭酒造の発展につながったといえるでしょう。
そして最後の瓶詰め工程でも獺祭は手を抜いてはいません。
多くの酒造メーカーでは上槽によってろ過されたお酒をさらに炭素ろ過されてから瓶詰めをするわけですが、炭素によってろ過をするという事はそれまで上槽によってろ過されたお酒とは風味が異なるという事になります。
獺祭の場合は炭素ろ過はせず上槽されたお酒は直接瓶詰めされ殺菌した後急速冷却をして製造完了となります。
上槽の段階で完璧なお酒になっているので余計な工程は挟む必要がないという旭酒造の自信がこの工程から見受けられます。
極限までこだわり抜いたからこそ
(画像:獺祭HPより)
獺祭を製造している旭酒造はかつて経営不振によって倒産寸前にまで追い込まれただけではなく、杜氏にも逃げられるなど危機的状況に陥っていました。
しかしあえて杜氏を置かずに徹底したデータ管理をしながら安定した風味と香りを提供するための伝統的な製造法を両立させた革新的な製造方法によって獺祭を生み出しました。
その味はとても高く評価されて口コミで広がり、今では入手困難な日本酒として法外な価格で売られるほどの人気となりました。
獺祭は製造開始が比較的新しいのにも関わらず、今やその人気は日本国内だけにとどまらず、世界的なコンテストでも高い評価を受けるなど、世界中に愛好家が居る日本酒となっています。
いかがでしたでしょうか?「獺祭(だっさい)の日本酒の味わいは?原料や製法へのこだわりを徹底解説」について書きましたが、獺祭についてさらに知りたいと思ったのではないでしょうか。
少しでも気になったら、ぜひ飲みながらこの記事をもう一度読んでみてくださいね。
次回は「而今」です!個人消費者が手に入れるのは難しいといわれるほど、プレミアムな日本酒です!ぜひ而今の魅力をみてみてくださいね!
記事はこちら>>而今(じこん)の日本酒の評価は?種類別の味の特徴やこだわりを解説 - theDANN media
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