こんにちは、theDANN編集長のダンです。
酒蔵の軒先に吊るされている丸いボールのようなもの。茶色でハチの巣のようにも見えるけれど、実は杉の葉を集めて作った杉玉なのです。
でもなぜぶら下げる必要があるのか、そもそも杉でないとダメなのか等々、疑問に感じることがあると思います。ここでは杉玉の歴史や役割などに触れ、あまり知られていない杉玉にスポットをあててみたいと思います。
それでは、はじまり〜はじまり〜

丸いボールのようなものは杉玉だった
「杉玉とは?」その名の通り、杉の玉のことです。杉の葉の穂先を集めてボール状にしたもので、大きさは30センチから50センチ程です。
酒蔵の軒先に吊るされていて、毎年新酒をしぼる頃に新しい杉玉に取り替えます。「ここは酒屋です」、「美味しいお酒ができましたよ」という合図で、今でいう看板のようなものなんですね。
だんだん見かけなくなり、その言葉さえ知らない人もいるかと思いますが、文字ではなく杉玉でアピールするとは粋な感じですね。地方によっては杉玉のことを酒林(しゅりん)と呼ぶそうで、漢字を見ればお酒と関わりがあることがわかります。
ヨーロッパでも同じような風習があり、ワインの新酒ができると、ワイナリーの入り口にホウキのような飾りを掛けます。作る材料は違っても、お客さんにお知らせするという方法は同じなんですね。
何のために吊るすのか
杉玉の役割は何なのでしょうか。先ほども触れましたが、その役割は新酒のお知らせになります。日本酒のほとんどは秋に収穫されたお米で造り、年末にかけてしぼられます。
その新酒が出来上がる時期に合わせて杉玉を軒先に吊るし、お客さんにアピールするのです。今でこそメディアやインターネットで最新情報を発信することができますが、そんなことができない時代は、このような方法でお知らせしていたのです。
お酒好きの方は杉玉が登場するのを楽しみにしていたことでしょう。 新酒の合図となる杉玉は、初めは緑色をしていて、杉玉もお酒も両方作りたてであることがわかります。
数か月間吊るされることでだんだんと枯れて茶色く変色し、それとともに新酒も奥深い味に変化していきます。杉玉の色はお酒の熟成具合も知ることができ、自分好みのお酒を選ぶ際の目安にもなります。
杉玉の歴史
諸説ありますが、元々は神様に感謝を捧げるもだったとされています。昔、疫病が流行した際にお酒を造って納めたところ、疫病は治まり、パニック状態に陥っていた人々も落ち着きを取り戻したと言われています。
その時の社氏がこのお酒を作り、奈良県桜井市の大神神社に祀られています。これにあやかり、美味しいお酒への願いをこめて、全国から蔵元さんたちが参拝に訪れるようになっています。境内の杉の木はご神木とされているので、杉玉作りにはこの杉を使用しているのです。
また、杉はお酒の腐敗も防ぐとされていているそうです。このような理由から杉を使用しているんですね。杉の歴史は古く、江戸時代中期より本格的に流行したとの記録があります。明治時代以降、このような風習は廃れ、毎年杉玉を付け替える酒蔵は少なくなりました。
杉玉作りの疑問
杉玉はどこで作られてるの?と考えたことがある人は少ないと思います。杉玉作りを専門とする会社もありますが、実は全国の酒蔵に吊るされている杉玉は、奈良県三輪山にある大神神社で作られています。
お酒の神様が祀られている神社で、酒好きにはたまらないパワースポット的な場所です。三輪山は大神神社の御神体となっている山ですが、聞き覚えのない人にとっては、「三輪そうめんで有名なところ」と言った方がわかりやすいかもしれませんね。
杉玉作りはとてもシンプルで、芯となる枠組みに杉の葉を隙間なく埋め込んで、丸く刈っていきます。きれいに刈るには熟練の職人技が必要ですが、なんと自分でも作ることができるのです。
魔除けとして玄関口に飾るために、小さめの杉玉を手作りしたり、通信販売などで購入することもできます。
花粉症の人は花粉がついているか心配かもしれませんね。杉の葉に雄花がついていないものを使用するので、アレルギー反応は起こりにくいそうですが、花粉が飛び交う時期は葉自体に付着していることもあるので、心配な人は時期をずらすなどしたほうが良いでしょう。
杉玉にはいろんな想いが詰まっていた
杉玉は新酒のお知らせをする看板のような役目で、元々はお酒の神様への感謝のしるしであることがわかりました。
初めはハチの巣みたいと思っていた杉玉ですが、あの丸の中には様々な想いが詰まっていたのですね。このように杉玉への理解が深まると、これから少し見方が変わるかもしれません。お酒に詳しくなくても、覗いてみてはいかがでしょうか。
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