「日本酒50選シリーズ」は、「〇〇の日本酒を徹底解説!味の特徴は?どんなこだわりがあるの?」と題して、様々な銘柄や酒蔵を紹介するシリーズ記事です。
これまでの記事やこれからの記事はこちら、「おすすめ日本酒50選を徹底解説!味の特徴は?どんなこだわりがあるの?」
No.4は「十四代」です!
はじめに
日本酒といっても銘酒と言われるものはいろいろありますが、中には手に入れることすら難しいと言われる銘柄があります。
かつて吟醸酒というと淡麗辛口が主流で、日本酒を知る男が飲むものというイメージがありました。
そんな中、突如として登場したのがフルーティで甘口の吟醸酒「十四代」です。
甘みのある吟醸酒なんて一流の日本酒とは言えないのではないかという予想を覆し、確かなクオリティの十四代はたちまち日本酒ファンを虜にし、あっという間に全国へ知られることとなりました。
今回は、そんな幻の銘酒と呼ばれる「十四代」について紹介していきましょう。
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山形の老舗酒蔵「高木酒造」
冬になると深く雪が降り積もる山形県村山市にあるのが、十四代を醸す高木酒造です。
実は古くから地元では酒蔵として知られています。
江戸時代初期にこの地に住む高木家が酒造りを始め、代表となるお酒は「朝日鷹」でした。
朝日鷹は今でも高木酒造で作られていて、地元山形では一般家庭で飲まれているような日本酒です。
そんな老舗の高木酒造ですが、名酒である十四代が生まれたのは平成になってからとなります。
高木酒造の14代目高木辰五郎のときに、「十四代」という名前の商標登録は行っていました。
しかし当初、「十四代」の冠を付けたお酒は特別な古酒につけて売り出すときに使われるだけで、決まった銘柄というわけではなかったのです。
幻の銘酒「十四代」は、15代目高木顕統が杜氏として初めて造りあげたお酒に付けたのが始まりであり、比較的新しい日本酒なのです。
ちなみに「十四代」の名前の由来も語り継がれるほど珍しいとされています。
基本的に数字は商標登録できないとされていて、なぜ「十四代」だけが登録できたのか謎なのです。
蔵元・杜氏の歴史を変えた高木辰五郎と顕統
高木酒造の15代目高木顕統は、杜氏として十四代を作っています。
実はこのことは非常に異例なことで、従来の酒造りというのは、経営を蔵元が行い、実際にお酒を造るのは杜氏の仕事というのが一般的でした。
杜氏となるには若くして下働きから酒造に入り、何十年も経験を積んで、杜氏として認められるのは50歳を過ぎてからというのが当たり前だったのです。
これは麹や酵母菌は生き物であるため、杜氏の腕にかかっていて、長い年月をかけて技量を上げていくからです。
しかし父親である14代目高木辰五郎は、当時高木酒造にいた杜氏の引退を機に、息子である顕統に蔵元として15代目を引き継がせると同時に、杜氏も任せてみようという仰天の発想をしました。
日本の代表的な文化ともいえる「蔵元」「杜氏」の伝統を打ち破ったきっかけとなったのです。
14代目高木辰五郎の力強いバックアップは、15代目高木顕統を後押ししたことに間違いないのですが、それだけが十四代を生み出した理由ではありません。
高木顕統は高校卒業後、東京農業大学農学部醸造科に進学して、科学的に醸造について学んでいました。
また、大学卒業後は東京の大手百貨店に勤務していたという経歴の持ち主でもあります。
ただ、いくら醸造について知識があっても、それで杜氏が務まるほど日本酒の世界は甘くないでしょう。
やると決めたからには徹底的にやりたいということで、蔵に入ってからは毎晩のように大学時代の恩師や研究所の専門研究員にアドバイスを求め、翌日にはそれを実行するといったことを繰り返し、ようやく自分の納得いくお酒を作り出したのです。
世に出すまでにかかった時間は、実に2年を要したとも言われています。
しかしいくら本人が納得できる日本酒であったとしても、市場で受け入れられるかはわかりません。
そこからは蔵元としての経営力が問われることになります。彼は15代目蔵元として、まず販売戦略を打ち立てました。
ターゲットを東京に定めたのです。
初めから全国に向けて販売するのではなく、情報・流行・人が集まる東京に目を付けました。
ただし大都会東京ですからお酒を扱う店も無数にあり、すべての店に置いてもらうのは無理でした。
そこで、お酒をいい状態のままで置いてくれる店を吟味することから始めたのです。
具体的な戦略としては、問屋を通さず直接取引してくれる店、お酒の取り扱いや保管状態がいい店などが条件にあげられたと言います。
お酒、とりわけ生酒と呼ばれるものはとてもデリケートな飲み物で、いくら美味しいお酒であっても取り扱いが悪いと味は落ちてしまうからです。
すべての条件をクリアできるお店に出会うためには、自らが足を運ぶことが重要であり、15代目高木顕統は東京に足しげく通い情報を集めました。
杜氏として自信が持てる日本酒を造り上げたことと、蔵元としての経営戦略、両方がすべてかみ合って、十四代は幻の銘酒とまで言われるようになったのです。
「十四代」の味わいと魅力
十四代の原料
「十四代」を造り上げたのは高木酒造の15代目高木顕統でありますが、実はこのお酒が出来上がるには、14代目高木辰五郎の努力なくしては出来なかったと言われています。
日本酒造りには、米・水そして杜氏の技量が大切な要素です。
高木酒造のある山形県村山市は雪がたくさん積もる地域であり、良質な雪解け水が名水として湧き出ています。
高木酒造で使われる水も、こうした名水を使用しています。
そして日本酒造りに欠かせない米ですが、十四代は「酒未来」「龍の落とし子」「山田錦」などが酒米です。
この酒未来を生み出したのが、14代目高木辰五郎なのです。
酒未来は、酒米の王様とも呼ばれる山田錦系統の米と、長野県の美山錦を掛け合わせてできた酒米になります。
酒米は日本酒の味を決定づけるもので、新潟の「五百万石」、長野の「美山錦」、岡山の「雄町」など全国各地で酒米は作られていて、その地方の日本酒の味を決めています。
ところが東北地方には長い間これといった酒米がなく、「なんとか東北地方に代表格となる酒米を作りたい」という願いを込めて改良を重ねてきたのが酒未来誕生のいきさつです。
いくら母米が有名どころの酒米であっても、育てる気候や風土が異なればおいしい酒米は育ちません。
東北地方の気候や風土にあった酒米を作り出すのにかかった年月は18年、ようやく完成したのは1999年のことでした。
高木酒造の14代目高木辰五郎が作り出した酒米「酒未来」があったからこそ、15代目高木顕統が造り出した「十四代」は生まれたとも言えるのです。
十四代の味わい
十四代の味わいの特徴は、何といってもフルーティだという点です。
これまで有名な銘酒は辛口が多かった中で、フルーティで甘く飲みやすいという吟醸酒は非常に珍しいものと言えます。
高木酒造は老舗でありながら、酒造として規模が大きいわけではありません。
生産数にも限りがあり、全国に流通させるほどの生産量は見込めないという点はあるでしょう。
だからこそ販売している店を限定して、美味しく味わってもらえる努力をしているのです。
十四代の中でも最高峰だと言われているのが「十四代竜泉」です。
精米歩合が35%の大吟醸酒であり、酒米は山田錦を使用しています。
雑味が少なく、よりフルーティな味わいに仕上がっているのが特徴です。薫りも芳醇で、ときにはバニラのような香りと評されることもあります。
また十四代の中でも、最も手に入れることが困難だとも言われています。
14代目高木辰五郎が、酒未来と共に生み出した酒米・龍の落とし子を使用しているのが「十四代龍の落とし子」です。
十四代シリーズはどれもフルーティであることが特徴なのですが、「龍の落とし子」は他の種類よりもキレがあると言われていて、甘みの中に適度なキレを感じる十四代だと言われています。
「十四代」は20種類以上のシリーズが販売されています。それぞれが違った魅力を持っているお酒であり、すべて人気酒であることはまちがいありません。
店頭で見かけることがほとんどなく、蔵元に行っても販売はされておらず、ホームページも持たない高木酒造ですから、その魅力を追い求める人は今後も絶えないことでしょう。
幻の銘酒「十四代」
日本全国にある日本酒の銘酒の中でも、幻と言われているのが高木酒造が醸す「十四代」です。
十四代は、高木酒造の若き蔵元であり杜氏でもある15代目高木顕統が造り出したお酒ですが、お酒の管理が行き届いているごく限られた店舗でしか販売されていないため、なかなか目にすることはなく幻の酒とも言われています。
大学で醸造学を学んだ若き顕統を、自分の後継者、そして杜氏として選んだ14代目高木辰五郎の先見の明は正しかったと言えるでしょう。
十四代の代名詞ともいえるフルーティな味わいは、辛口が主流であった吟醸酒の歴史を変えたのです。
「十四代の日本酒を徹底解説!甘口の吟醸酒の特徴やこだわりの原料」について、書きましたが十四代について、詳しく知ることができたのではないでしょうか。
ぜひ十四代を飲みながら、もう一度読んでみてくださいね。
次回は「醸し人九平次」です!JALのファーストクラスでももてなされる日本酒でもあり、ワインの醸造からヒントを得ているこだわりの詰まった日本酒です。
記事はこちら>>醸し人九平次の日本酒を徹底解説!味の特徴は?どんなこだわりがあるの? - theDANN media
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